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INTERVIEW : GOVERNMENT ALPHA


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バイオグラフィー

吉田恭淑のソロによるEXTREME HARSH NOISEプロジェクト。
1992年頃から自宅録音による実験的なサウンド作りを目的として音源制作を始め、1994年からGOVERNMENT ALPHA名義で本格的にHARSH NOISE制作に向けての活動を始める。
1995年にUKパワーエレクトロニクスの重鎮WHITEHOUSEのレーベル"Susan Lawly"からリリースされたコンピレーションCD "Extreme Music From Japan"でデビュー。
以降は積極点に作品リリースとライブ活動を展開し、今までに海外ツアーを7回敢行している。
究極のサウンドは何かをテーマにしつつ、幅広いジャンルのアーティストと共演/
コラボレーションをしながら、エレクトロニクスの様々な可能性を模索し続けながら今日に至る。
そしてHARSH NOISEという特異なサウンドスタイルを持ちながらもロック的な音楽感覚でノイズサウンドを構築していく独特なスタイルと、ハイテンションでフィジカルアクションを交えた躍動感溢れるダイナミックなライブパフォーマンスは国内外を超えて評価が高い。
GOVERNMENTALPHAをリリースする為のレーベルとして運営をしているXERXES(クセルクセス)レーベルからは、自身の音源のみならず世界各国のノイズアーティストの作品もリリースをしており、今ではその数は80タイトルを超えている。
またレーベル活動と同時期に始めたジャケットアートワークの評価も高く、今までに多数の作品を他アーティストのアルバムジャケットへと提供している。
そして2008年大阪で自身初となるアートワーク作品展を開催した。

主なリリース作品
*記憶の解像度 4CD 2009 (Pica Disk/Norway)
*Quaint Putrid Slag CD (Kubitsuri Tapes/Japan)
*Venomous Cumulus Cloud CD 2007 (Pacrec/USA)
*Spontaneous Combustion CD 2006(L.White/GERMANY)
*Chronic Deja Vu 10" 2006(Gender-Less Kibbutz/USA)
*Sporadic Spectra CD 1999 (Ground Fault/USA)
*Alphaville LP 1999 (Segerhuva/SWEDEN)

Government alpha/Xerxes
http://www.myspace.com/xerxes1969
http://www.geocities.jp/xerxes_alpha2001/




Q1,
GOVERNMENT ALPHA(以下GOVT.A)の主な活動歴、及びGOVT.Aそのものである吉田恭淑さん自身の音楽や表現分野でのキャリアを簡潔に教えて下さい。

A1.
ノイズ的なものをぼんやりと自宅で録音し始めたのが1992年頃からで、GOVERNMENTALPHAとして正式に活動し始めたのは、1995年にリリースされたSusan LawulyのコンピレーションCD[Extreme Music From Japan]に参加してからのような気がします。
それまではただ単に自分が聞いて楽しむ為だけに音源を録り溜めていたのですが、このコンピに入ることによってはじめて第3者に聞かせる事になり、いろいろと未熟な部分ばかりが目に付き、「もう少しまともなノイズが作れないものだろうか」とかなり落ち込んだのがきっかけであったかもしれません。
15歳くらいからギターを始めて、30歳くらいまでは趣味程度で時々弾いたりしてましたが、ここ最近はまったく触らなくなってしまいましたね。キャリアとはっきり言えるのはGOVERNMENTALPHAとしての活動くらいでないでしょうか。それ以前にロック寄りのインプロバンドとして数回ライブを行ったりしていましたが、やはり人数が増えれば増える程、やりたい音楽の方向性や趣味の相違が出てきますので、結局はいつの間にか自然消滅してしまう事が多かったです。ですのでGOVERNMENT ALPHAとして1人で活動を始めて、自分が全てを自由に決定する事が何とも楽しく感じられました。
アートワークに関しましては、ただ単に自分の作品をリリースするのにジャケが必要であると言う理由で作り始めただけであったと思います。「アートワーク」であるという意識は無かったです。

Q.2
"GOVERNMENT ALPHA"というユニット名に込められた意味はなんでしょうか。由来などがあればお聞かせ下さい。

A2.
活動を始めた頃はまだ、インターネットや電子雑音のような活字媒体によるノイズに対しての情報収集が乏しく、それがかえってノイズアーティストに対してのミステリアスな部分やうさん臭い分を想像する余地があったというか、自分自身もノイズは本当の気違いが作っているんじゃないかと思い込んでいたりした所もあったので、それなら自分も怪しい機関が作った怪しいノイズを匿名的に作って「やり逃げ」のような感じでアピール出来ないかと思い立ち、それなら手っ取り早くなんかうさん臭くて怪しい政府というかんじでGOVERNMENTという言葉をバンド名に使いたかったような気がします。
ですがある時期にふと、そういえばゴダールの「アルファヴィル」(アルファ都市という意)という映画が凄く好きだったことに気付き、もしかしたら無意識の内にその語感から影響を受け
ていたかもしれないと思いました。それからはバンド名の由来を聞かれた時は、「アルファヴィル」をもじった、と答えております。
漠然とした考えではありますが、自分自身で価値観を作り出して行く絶対的な自己世界を作り上げて行く、というようなことは当初から考えておりましたので、そう思えば「GOVERNMENT
ALPHA」とうネーミングも間違ってはいなかったかなと思います。

Q3.
現在のGOVT.Aのスタイルは徹頭徹尾大音圧で高純度なハーシュノイズとなっ
ていますが、吉田さんがいわゆる"ノイズ"特に"ハーシュノイズ"に求めているもの、そして自らのサウンドに託しているものはなんでしょうか。
GOVT.Aというユニットが追求するメインとなるテーマはなんでしょうか。

A3.
自分自身ではそれほど大音圧や大音量に対してこだわりがあるわけでなく、純粋に迫力のあるサウンドを作りたいという欲求があるだけです。むしろ、音圧や音量よりは、音色の方にこだわりを持っています。自分のツボを刺激してくれる音色なら、例え単調な展開でも気持ちよく長時間聞くことが可能ですし。
ハーシュノイズに何かを求めていると言うよりは、自分の創作行為全般に対して、自分の聞きたい/見たい物を作る、と言う思いが根底にありますので、それほどノイズの枠に自分を閉じ
込めようというつもりは全くありません。。。というかあれこれ新しい事をやろうと試みますが、結果的に全てがハーシュノイズになってしまうというのが実状です。
いずれにせよ今現在のGOVT.Aのサウンドスタイルに満足しているわけでなく、まだまだノイズそのものの面白さを追求する戸口の扉をくぐった段階にしか過ぎないと思っていますので、こ
れからまだ、ノイズ録音に対する施行錯誤がたぶん、一生続くのでないかと思います。

Q4.
GOVT.Aのサウンド作りの要になっているものはなんでしょうか?常用している機材や録音についてのこだわりの他、意識の面においても自らのサウンドのどんな点を重視しGOVT.Aの軸にしているのか、GOVT.Aのサウンド作りの原動力となっている衝動はなんなのか教えて下さい。

A4.
よくGOVERNMENT ALPHAのサウンドはデジタルだと言われるのですが、録音方法は未だに原始的で、4トラックカセットMTRを使っております。使用している機材はたぶん他のアーティス
トに比べたら驚く程チープな物ですし、基本的に録音作業はヘッドフォンを使用して気に入った音色を細かいニュアンスで作り上げて行くような微妙な作業ですので、気に入った音色が出来ればその場で一気に2,3時間分くらいの音源を作り込んでしまいます。最近はオーバーダブをしても一回くらいで、ほとんど一発録りに近いノリで録音しています。その2?4トラックの音源をリアルタイムの手作業でDATにミックスダウンをして完全なマスターを作ります。最終的にデジタルでパソコンに取り入れPeakというソフトを使って編集をするのですが、それはただ単フェードイン、フェードアウトや気に入らない部分を削除するだけで、基本的にパソコンを使用してのマスタリングは一切しておりません。DATにミックスダウンをした時点で音圧/音色は完成している感じです。何が要かと聞かれれば、当然「音色」が要と答えますし、どんな点を重視しているかと問われれば、やはり「音色」と答えます。活動を始めた当初の原動力はたぶん、「自分で聞きたい音を作る」だと思いますが、現在では音作りそのものが生活の一部と化して、食事をしたり歯を磨くのと同じくらいの次元になっているので、むしろ音作りをしていない時の方が違和感を感じたりもします。ただ自分で音を出している時は、自宅録音やライブに関わらず、結構自分の世界に入り込んで時間や思考の感覚が完全に麻痺して現実感が薄れてしまいますので、もしかしたら表現方法は単なる現実逃避に過ぎないのかな?と時折感じたりもしています。

Q5.
GOVT.Aの作風について、過去や現在において影響を受けた人物、創作物、それ以外のものも含め教えて下さい。

A5.
GOVT.Aに影響があるかどうかはともかく、多感であった十代の頃に感動した物に、多大なる影響を受けていた事に、最近になって気付いたりもします。
作家だと、安部公房、P.K.ディック、大江健三郎、ガルシア・マルケス、寺山修司、等
映画だと、ブリキの太鼓、炎628、8 1/2、タクシードライバー、野獣死すべし、等
ノイズに関しての影響というかフィードバックしているものは、モンティパイソン、ノイバウテン、Missing Foundation、Nurse With Wound、ゴダールの映画、その他多数、ここには書ききれない程のものから受けた影響が自分の中で吸収されております。
ただその時々に寄って趣味や思考が変わりますので、なんだかんだと新しいものを見つけて来てはいろいろと掘り下げて行くような状況がずっと続いていますね。ここ数年は格闘技の試合から、いろいろなアイデアや音楽に対する方法論のような着想を得る事が多いです。これは自分の感覚的な物ですので、ちょっと上手くは説明出来ないかもしれませんが。

Q6.
GOVT.Aのこれまでの活動歴(リリース、ライヴ、ツアー等)の中で、GOVT.Aに大きな影響や結果を残したり重要なエポックとなったといえる出来事を3点程度あげて下さい。

1.1996年にXerxesからリリースしたカセット作品「Erratic」がGOVERNMENT ALPHAのスタイルを確立する上での分岐点になったと思います。それ以前は、ノイズという何かしらネガティブなイメージに縛られ、同じ所をぐるぐると廻っていたような気がしましたが、なんか急にいろいろと吹っ切れまして、好き勝手に音を出してみよう、という気分で録音をしてみたら功を成した気がします。またそれまで試行錯誤していた音色/音圧もこの作品から一皮剥けたと思いました。

2.1997年か98年頃にとある地方で演奏をしたのですが、演奏を始めて2、3分後にその店の店長がズカズカとステージに上って来て僕の耳元で「不愉快だから音を下げるか演奏を止めてくれ
」と言いました。自分自身はいい気持ちで演奏していたのですが、その言葉で一瞬にしてテンションが下がり、機材をぶん投げて暴れてやろうと思ったのですが、すぐさま「それで止めた
らお金を払って見に来てくれたお客さんにも、このライブを企画してくれた主催者にも申し訳ない」という思いになりまして、なんとか音量を押さえ気味にして最後まで演奏を続けました
。途中、店長がまた上がって来て「電源切るぞ」と言ってきましたが。。。
この時から、自分の出す音を心の底から不愉快に感じる人がいる事と、それでも興味があってお金を払って見に来てくれるお客さんがいると言うことに気付きました。だからどんな状況で
あろうと妥協せず、ステージに立った以上は自分の役目を努めないといけないなと。その時からそんな意識が少なからず芽生えたかもしれません。
ちなみに、そのお店はその後に無くなりましたけどね。

3.ツアーに関しては1998年にKazumoto Endoと行ったアメリカ西海岸ツアーも一つの分岐点になりました。始めての海外と言う事もあって英語でのコミュニケーションもままならず、おま
けに連日の荒い演奏で機材も日増しに壊れて行って、そんな状態にも関わらず演奏を続けなくては行けないという状況にだんだんと追い込まれていきまして、それでもなんとかやり通した
と言うのが、その後の自信というか強みになりました。人間、追い込まれたらどうにでも出来ると。ただ、その追い込まれた時に出せる事のクオリティが高くなければ意味が無いとも思いましたけど。

この上記の3点に留まらず、活動の分岐点になるような作品やライブは毎回のようにありますし、毎回やり終えた後は反省する事が多いので、反省すると言う事はまだ上達するノビしろがある事だと思っています。

Q7.
吉田さんはGOVT.A以外にもS.ISABELLA、バロムワン、MONSTERDVD、ARAKATSUMA等、他名義でのソロユニットや他者とのユニット/バンドでも活動されていますが、これらGOVT.A以外の活動と、GOVT.A本体との関係性についてお聞かせ下さい。また、GOVT.Aとしても中原昌也、PAIN JERK等のノイズ系ミュージシャンのみならず、ボイスパフォーマーであるウィリアム徳久など他分野のアーティストともコラボレーションライヴを度々敢行していますが、吉田さんは他者と共に演奏/楽曲制作する事やコラボレーションすることについてどのような価値を見いだていますか?それらの経験が GOVT.Aソロの活動へフィードバックされてもいるのでしょうか。

A7.
コラボレーションの良さは、今まで気付かなかった自分自身の別の面を、相手の演奏者に寄って引き出される事でないでしょうか。
一番理想的なコラボレーションは、双方の良さをお互いに引き出す事だと思います。GOVERNMENT ALPHAというのは僕自身の完全なる自己完結であり自己満足であるユニットですのでどうしても時折盲目的なって間違った方向に突き進んでしまう事もあ
るのですが、そんな折りにコラボレーションをやったりすると、自分自身の軌道を修正するきっかけになったり、自分の利点や欠点を改めて気付かせてもらったりしてもらえる事があります。それがまたソロ活動へと当然フィードッバックされて行きますので、コラボレーションは本当に重要な要素だと思います。僕自身は言葉によるコミュニケーションから音の着想を得る事は余りありませんが、音のコミュニケーション、つまりコラボレーションから得る着想や影響はかなりありますので、音を作る人は音のコミュニケーションをもっとすべきだと思いますよ。会話を磨きたいのであれば言葉のコミュニケーションが有効だと思いますけど。バンド活動をしていた時も、スタジオの練習中にわざわざ手を止めてディスカッションをするくらいなら、スタジオに入っている時は徹底的に音を出して、終わってから居酒屋でディスカッションをすればいいと思ってますし。

Q8.
GOVT.Aのライヴは非常にパワフルで、なおかつ自由な印象を受けます。時には機材から手を離して身を躍らせる様なパフォーマンスを行ったり、ある時は自作楽器を持ち出したり、機材の上に電動のおもちゃを乗せておもちゃの動きを音の変化に反映させたりと、視覚的、アイデア的な要素でリスナーに呼びかける場面もありますね。また、GOVT.Aのライヴはエフェクター等の機
械類を多く用いながらもあくまで有機的で、演奏者の肉体から発生する音楽というイメージを強く想起させます。吉田さん自身はGOVT.Aのライヴをどう捉えているのでしょうか。
GOVT.Aのライヴにおいて吉田さんが重視しているもの、表したいものとはどのようなものでしょうか?ライヴと録音物とでは託しているもの、目指しているものに違いはありますか?
例えば、近年のライヴではボーカルを多用されていますが録音物では皆無の様に思います。それは意識的に使い分けているのでしょうか。

A9.
「機材から手を離して身を躍らせる様なパフォーマンス」というのは身に覚えがありませんが(笑)、演奏中は完全に自己世界に入り込んでいますので、もしかしたら無意識の内のそんな行動を取っていたかもしれません。
ライブを始めた頃は、どうにも自分の表現力が乏しくて半分自棄になって暴れたり、自分が観客としてみる場合は当然アクション的な物があった方が通じやすいと思ったりもしていたのですが、ここ最近はやはり「音で殺す」要素が無いといつまで経っても成長が出来ないんじゃないかと思い始めました。なんかヨボヨボで死にそうなおじいちゃんがステージに出て来たけど、音を出したら一瞬で殺られてしまうという。そんなライブがしたいですね。本当に。
ただライブは一過性のものなので、演奏するからには命がけで全てを出し切りたい(というか全てを出しきらないと次へと繋がる課題が浮かび上がって来ない)ですし、僕自身はロックから影響を受けてますのでやっぱりライブはどこかしら汗臭いフィジカルな部分を感じるのが好きなせいかも知れません。ボイスは昔からライブで使っていましたが、ここ最近になってもっと効果的な使い方が出来るようになった気がしてきましたので、その辺をもう少し応用して発展させて行きたいと思い頻繁に使っている次第であります。録音物の初期作品では結構ボイスを使っていたりしますよ。ただ意味不明な絶叫だったり、今となってはどういうつもりで録音したか分からないうめき声であったり。家で録音をする場合は観客の事を意識しないで機材の操作に集中してしまうので、どうしても機材演奏だけで完結してしまうというか、ボイスを使うテンションとはまた違うベクトルのテンションで演奏をしているので、意図的にではありませんが結果的にエレクトロニクスだけの作品になってしまいます。別に家でボイスの録音も出来るのですが、かといって音源全体にボイスを必要だとは思いませんし、あくまで一つのマテリアルとしてしか考えておりませんので、まあ必要になったら使う、といった感でしょうか。

Q9.
ノルウェイのアーティストLASSE MARHAUGのレーベル、PicaDiscから今年リリースされたGOVT.Aの未発表曲とレア音源で構成された4CDBOX"記憶の解像度-Resolution Of Remembrance 1992-1999-"を、封入の吉田さん本人によるライナーと共に実に興味深く鑑賞しました。活動最初期から90年代末までの作風の変遷が音と文章で確認出来る非常に良い内容と思います。このBOXのDISC 1等でGOVT.Aの最初期の音源を聞くと、既成録音物や風景音からのサンプリングやコラージュの手法を使ったり、いわゆるハーシュノイズ的なもの
とは違うエクスペリメンタル的なアプローチをしている部分が現在よりも色濃く感じられます。
GOVT.Aのスタイルが上記の様なスタイルから現在のストレートなハーシュノイズへと変化していった事には、どのような理由や意識の変化があったのでしょうか?

A9.
先にも話しました通り、音作りの一番の目的は、「自分自身が聞きたい音を作る」ということであり、元々は第3者に聞かせるつもりが無かったので、とりわけ初期の頃はアイデアを思いつくままに録音をしていたからだと思います。あとノイズというジャンルを良く把握していなくて、ノイバウテンやTEST DEPTのようなインダストリアルなものがノイズだという風に思い込んでいましたので、自然と音楽的な形態を取っていたのかもしれません。なぜハーシュスタイルに変遷して行ったかというのは、たぶん他のバンドよりももっと迫力と破壊力のある究極なノイズを作りたいと思ったかもしれません。実際に音圧を上げる録音方法はかなりの試行錯誤と年月を費やしたような気がします。何よりも「ハーシュノイズ」というサウンドを、自分のアイデアだけで作り上げていく事が想像していた以上に困難で、ノイズとして完成するまでにいろいろと実験的に機材の配線を試してみたりしていました。また、多重録音という意味も知らなかった時はラジカセやウォークマンを使っていろいろ録音方法を試していたのですが、その経験が結局は音作りにのめり込むきっかけとなり、今現在の録音方法に対するアイデアとなって跳ね返って来ている面もあります。

Q10.
GOVT.Aと吉田さんの運営するレーベルXERXESからリリースされる音源のジャケットに用いられるグラフィックは、多くの場合吉田さん自身の手がけたコラージュやドローイングで構成されていますね。それらは非常にカラフルかつサイケデリックで、特徴的なものだと思います。グラフィックの面では制作のきっかけとなったり作風に影響を受けた作家はいますか?また、吉田さ
んはGOVT.A/XERXESの活動とは別にグラフィック作家としての活動もされているのですか?
吉田さんの中ではグラフィックを制作することと、音楽を制作する事がどのようにリンクしているのでしょうか?

A10.
制作のきっかけはやはり、自分で作った音に自分でジャケを作るという程度のものでありました。自分がノイズを聞き始めた90年代初頭はハンドメイドパッケージが当たり前のような時
代でもありましたし、Nurse With Woundの作品を見て、単純に自分自身で全てを完成させるのが当たり前で、自分でもかっこいジャケットでリリースしたい、という意識がありました。その頃はパソコン等は高価な物で自分の周りにデザイン的なことを出来る人間がいなかったので、必然的に自分で全部やるしかないと思い、なんだかんだと今現在まで続いている次第であります。
グラフィックに関して影響を受けた作家というか作品は、アールブリュからは随分と影響を受けました。特にアドルフ・ベルフリには随分と感銘を受けました。美術の教育を受けなくとも、感性を研ぎすませればそれなりの作品が出来上がるのだと。それで、開き直ってアートワーク制作として始めた部分もあります。もともと音楽や絵を他人から習う事に抵抗がありましたし、そういった授業にお金を費やすのであればたくさんのレコードを買ってたくさんの作品を見に行く事にお金を使うべきだと思っていましたので。あと音楽やアートワークでお金を得ようとかビジネス的には全く捉えていなかった、というかビジネスになり得ないと思っていたのが、逆に自由に好き勝手に創作活動をやる事が出来たのでしょう。
グラフィック作家と明言しての活動はしておりませんが、時々ジャケットの依頼をされて制作をしています。今はDavidHoenigmanというアメリカ人作家の小説の表紙と挿画190枚の制作をしているのですが、比較的自由に作る事が出来ますので、いろいろと楽しみながらやっております。
僕の中ではグラフィックの制作と音楽の制作は完全に分離しておりまして、グラフィック制作で集中している時にライブの予定が入ったりすると、時々本気でどうやって演奏をしていたかを忘れてしまっている時があります。逆に音源制作をずっと続けていて、次にグラフィック制作に取りかかる時は、その感覚を思い起こすのに随分と時間がかかったりする時もあります。
ですので両方の制作を同時進行で行うのは僕には不可能です。
ちなみに文章を書くのもまた別行為ですので、このインタヴューに取りかかるのにはやっぱり時間がどうしてもかかってしまいました。かといって完全主義でもないのでその作業を始めたら案外早く終わらせてしまう事もあります。

Q11.
今回[...]dotsmarkからリリースさせて頂く新作"SeventhContinent"について質問させて下さい。この作品のテーマはなんでしょうか。オーストリアの映画監督ミヒャエル・ハネケの作品に同名の映画がありますが、そこから着想を得ているのでしょうか?GOVT.Aの作品タイトルはしばしば映画のタイトルやキャラクターからの引用をされている様に思いますが、吉田さんは映画等他者の創作物をモチーフにする場合は多いのですか?

A11.
"Seventh Continent"と言うタイトルはご指摘の通り、ミヒャエル・ハネケ監督の作品から持ってきました。ちょうど音源制作を始めようとしていた時、偶然にハネケ作品のほとんどを見る機会があり、以前に見て最高に不愉快な気持ちになった「ファニーゲーム」とはまた違った衝撃作ばかりというか、この人は天才か気違いのどちらかだなと非常に感銘を受けました。そのなかで"Seventh Continent"が特に印象的で、ここまで人間を虚無に描けるのかと衝撃を受けまして、ストーリーがほとんどマンションの一室で展開する密室劇でありながら、どこか理想郷を想像させる「第七大陸」(地球には六つの大陸しかない)というタイトルにも惹かれまして、そのタイトルの意味するもの、含有するメッセージを自分なり解釈してみて、今回の作品タイトルに使用しようと決めました。ですのでアートワークの世界観は、この世に存在しない第七大陸の情景、をテーマにしていますし、物心ついた時から漠然と感じていた「虚無感」という捉えどころの無い物を、一度形にしてみるいい機会だと感じたのも理由の一つです。アルバムの構成的なアイデアは他アーティストの作品、とりわけプログレシッヴロックのアルバムからヒントを得る事が多い
です。その辺りの作品はいかに一枚のアルバムをドラマティックかつ最後まで集中して聞かせるかのアイデアが練られていますし。それとは別にアルバムの全体的なイメージ、世界観等のアイデアは映画や本から着想を得る事が多いですね。J.G.バラードの小説を読むと、なんか無性にノイズ作品を作りたくなります。たとえどんなに優れた作品を作ろうとも、結局は最後
まで聞いてもらえないとこの世に存在しないと同じ事ですし、CD世代になってからはアルバムを最後までを集中して聞き通す事が難しい事にも思えますし。ですのでリスナーが入り込みやすく、居心地の良い世界観を作り出すには、やはり制作者自身が60%程の明確なビジョンを提示し、残り40%のビジョンをリスナー自身の感性で補正していく、そんな風に聴けるアルバムがいろいろ楽しめるのでないでしょうか。100%のガチガチなコンセプトやイメージを提示してしまうと、リスナーが想像する余地がなく逆に排他的な作品にも見えてしまいますので。

Q12.
"Seventh Continent"は00年代最後の年におけるGOVT.Aの最新型となりますが、この作品で目指したもの、最重視した点はどこでしょうか

A12.
テーマはズバリ、「作り込まない」です(笑)。これは良い風に解釈してもらいたいのですが、10年以上音源制作をしているとどうしても予定調和的な部分が出て来てしまって、時間をかけて作ってみた割には以前に作った物と余り変わりがないという事が久しく続きまして、その状況をどのように打破するかと考えました所、やはり初心に戻るのが良いのではと思いました。それで昔に録音した物を聞き返してみますと、思いついたアイデアを細かく考える事無くそのまま感じるままに録音していたんだなぁと。その感覚のままとりあえず行き当たりばったりに録音を初めて数時間経ったら疲れてしまってその日は途中で録音を止めてしまいました。まあ、あとからオーバダブをすればいいやという感じでそのまましばらく放置をしていたのですが、急に思い立って続きを録音しようと思いテープの初めから聞き返してみた所、自分でも驚くくらいの適当さというか、なんか気負いの無いラフな感じが新鮮に感じまして、オーバーダブ前のラフ素材でありながらも以外と繰り返し何度も聞けてしまうという事を発見しました。それならばいっその事、これ以上音を重ねないで部分的に切り取って使えるんじゃないかと。当然、GOVERNMENT ALPHAのアルバム作品としての完成度を上げる為にサウンドに対する妥協や手抜きは一切無いので、今までの作品の流れを組む物ですが、音の展開的には自分としてはかなり強引な流れになって大変満足出来るアルバムに仕上がりました。ですので一枚のアルバムの流れとしては、部分的にラフなところがあった方が作品としてメリハリが付くというか、聞く側としても予想を裏切る展開になるのでそれなりに楽しめるのではないかと。僕の理想のアルバムとは、繰り返し聞くに値し、聞くたびに新たな発見のあるアルバムですので。

Q13.
吉田さんはGOVT.Aとしておよそその半生にわたりノイズ制作を続けられていますが、長期間ノイズの世界に携わり、リリースやツアー、アーティスト同士の個人的な交流等で実際に世界中のノイズシーンの現場と関わる事で見えてくるものとはなんでしょうか?例えば自身や周囲のノイズに対する意識の変化や、ノイズを取り巻く環境に対する印象はどのようなものでしょうか。
活動を続けて行く上で何らかの問題意識等を感じるときはありますか?

A13.
関わる中で見えてくるもの、それは「駄目な奴は駄目、出来る人は出来る」そんな所ですかね(笑)。それは冗談として、十数年前に比べれば今の方がノイズというジャンルも多少は知られるようになったというか、様々なジャンルの中に一要素としては組み込まれるようになって来たのではないでしょうか。ただ、ピュアノイズだけの世界になると、それほど昔と状況は変わっていないような気がします。僕自身も活動を始めた頃からの状況と根本的には大きな変化も無いですし、僕自身のノイズに対する考え方も何一つ変わっていません。そもそも自分自身が楽しむ事が大前提ですので、外部の変化にそれほどの興味が無いというのが本音でしょうか。ただ時代の流れというかシーンの変動は大まかに把握しているつもりです。ですけど、今までに本当にたくさんの新しいバンドが出て来て精力的に活動を始め、いつの間にかいなくなって行く光景を見ていますと、それらバンドの音楽に対する姿勢と、僕自身の音楽に対する姿勢の違いと言うのが明確に現れてきまして、尚更に自分は自分のスタンスで行動して行こうと思います。

Q14.
GOVT.A及び吉田さんの今後の活動予定を教えて下さい。GOVT.Aは今後どのような展開を目指しているのでしょうか。

A14.
今後も今までと変わらず、といった感じでしょうか。GOVERNMENTALPHAに関しましては生涯ハーシュノイズスタイルを通しながらも、いろいろなノイズの可能性を探りながら印象に残るようなサウンド作りを目指したいと思います。それ以外にもS.Isabellaで作っていたようなハーシュサウンドを使わないコラージュノイズや、少し緩い感じのダラダラしたエレクトロニクスをまた作りたいと思うので、もしかしたら突発的に新しい名義で始めるかもしれません。
次回リリースに関しましてはいくつか予定があるのですが、それはマスターが完全に出来上がってからインフォしたいと思います。リリースの了承をしたものの、なかなかマスターを送る事が出来ずにレーベル側に迷惑をかけてしまった事が何回かありましたので、今後はなるべく出来上がって先方にマスターを送ってからインフォを載せたいと思います。

Q15.
最後に、何かありましたらお願いします。

A15.
最新作である"Seventh Continent"CDはジャケも含めると8枚のアートワークが封入されている豪華な使用となっています。視覚的にも聴覚的にも楽しめるように作られてますので、是非聞いていただければと思います。あと90年代のカセットや少数リリース作品をまとめたCD4枚組BOXセットも、バンドが完成していく過程をふまえた、裏ベスト盤的要素を含む内容に仕上がっていますので、是非そちらの方も聞いてもらえると幸いです。
このインタヴューの機会を下さって本当にありがとうございました。

 

 

ありがとうございました。
(2009年10月~11月 メールに依るインタビュー)

 

 



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